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第252号 2011.07.25
機関紙252号
- いのちを守るセーフティネット
松本協立病院・塩尻協立病院で無料低額事業はじまる - 総会・総代会ひらかれる
2011年度 各法人の重点目標 - 群馬民医連「利根中央病院」への診療支援について
- 上伊那生協病院 医療機能評価認定
- ピースゼミナールでフィールドワーク
- 2012年介護保険改定をみんなで考える県民集会に参加を!
- 東南西北
251号「'手遅れ死'の背景に高い保険料」の本文で「年収」は「所得」の誤りでした。おわびして訂正します。
松本協立病院・塩尻協立病院で無料低額事業はじまる
いのちを守るセーフティネット
無料低額診療事業(以下無低診)は、社会福祉法にもとづき、低所得者が経済的理由で医療を受ける機会を奪われないように、窓口負担の一部または全額を減免する事業です。相談と同時に診療を開始することで「手遅れ死」をふせぎ、相談活動で暮らしの再スタートもできると、08年の全日本民医連第38回定期総会で「積極的に挑戦しよう」と呼びかけられました。現在、200を超える加盟院所で実施されています。
長野県連では09年に諏訪共立病院ではじまり、10年度は170人が利用しました。実施は、長野県へ届け出をし、医師会・福祉事務所・社会福祉協議会などと相談しながら運用を定めます。長野中央病院にも7月1日に県の許可がおり、健和会病院と上伊那生協病院でも準備が進められています。松本協立病院・塩尻協立病院の合同プロジェクトの中村靖さんからの報告です。
未収金額減少の陰で
7月1日付で松本協立病院と塩尻協立病院で無料・低額診療事業を開始しました。事業の必要性は、この間つかんだ事例が物語っています。
松本協立病院では、毎月ハローワーク前で行っている相談行動での無保険者の相談から、多数受診につながっています。また、5月に記者会見した国保等死亡事例報告では、県連9事例のうち3事例が塩尻協立病院からの報告でした。事例は、無低診または国保44条で救えたかもしれないと思えるものでした。
実は、塩尻協立病院ではここ数年累計の未収金額が減っています。SW・医事・管理の連携による未収金対策チームの健闘、と思いたいところですが、「生活に困窮している患者さんが病院に行くことをそもそも諦めているのでは」。危惧していたことが現実だと突きつけられました。
合同プロジェクト会議で論議を重ねて
無低診を開始するためには連絡会内事業所の連携は欠かせません。昨年から合同で連絡会プロジェクト会議を7回開催し、そこで出された方針・課題を各事業所で検討しました。とくに基準づくりに重点を置いて論議を重ねました。
両病院での全職員集会や職場代表者会議、医局会義、時間外部会などでは、「減免期間の3か月を過ぎたらどうするのか?」「薬はどうするのか?」といった質問や業務への不安も出されました。松本では急性期医療を担う機能からの業務過多、塩尻では職員体制の薄さなどの課題がありましたが、具体的な業務の流れを検討する中で、工夫や提案が出されるようになりました。
ひと足早くスタートした諏訪共立病院の取り組みにより、患者増による増収で持ち出し分をカバーできることを学び、経営的な問題も払拭されました。
SWを講師に相談担当者が学習
松本協立病院では、SW以外にも相談担当者を配置しました。当面医事課長、事務管理がSWの指導を受けながら申請の相談にあたります。このチームは、事業が適用にならなかった場合の援助や、減免期間(基本3か月)以降の対応などを集団で検討(カンファレンス)する役割も持っています。
7月7日にSWを講師に、相談担当者と医事課主任、副主任を対象に学習会を開催。ロールプレイを交えながら、申請に必要な生活保護基準の算定や情報収集に関する基本的な知識を学びました。その中で準備していた調査票に不足の項目や、減免基準に「就学援助金受給者」も加えるなどの改善点が見つかりました。今後も事例を重ねながらさらにスムーズに運用しようと確認しました。
塩尻市では全児童の1割が就学援助金の対象
塩尻協立病院では、塩筑医師会の副会長である開業医のY先生に古川院長があいさつに出向きました。Y先生は事業に一定の理解を示し、さらに「これはいいことなので、協立だけでやるのではなく、塩尻市として何かできないものか」とその場から塩尻市に問い合わせ、その日のうちに、塩尻市の国保課担当者が、できたばかりの「国保44条」の内規をあわてて古川院長に届ける、という一幕もありました。
7月には市教育委員会と懇談、小中学校の校長会へ事業のお知らせをしてもらうよう依頼しました。なんと、塩尻市の小中学校では、全児童・生徒の約1割に就学援助金が支給されていました。
無低診事業は社会保障充実へのスタート
無低診は、たとえ適用されなくとも医療から遠ざけられていた人をまず受診につなげることが最初の目的ですが、ゴールではありません。改悪され続けている社会保障制度を憲法25条に照らした制度へ改善していくためのスタートです。
小沢康士松本協立病院医事課長は、「未知の部分も多く不安は尽きませんが、医事課の力量が高められる絶好の機会としてとらえ、みんなで学習し、アンテナを高く取り組みたいと思います」と語っています。
連絡会では改めてこの事業の意味や内容を学ぶ全職員学習会、相談担当者や窓口担当者の学習会も始まっています。7、8月に経験を積み、9月1日に事例をもって記者会見したいと思います。
(塩尻協立病院事務次長 中村 靖)
2011年度 各法人の重点目標
総会・総代会ひらかれる
長野医療生活協同組合第56回通常総代会 6月19日
東日本大震災を契機に、人びとの絆を強め、支え合い・助け合いの輪をさらに広め、安心して住み続けられるまちづくり、ネットワークづくりに取り組みます。
事業活動では、住み慣れた地域で暮らしたいという願いに応える介護複合施設(デイサービス・ショートステイ専用施設・高齢者専用賃貸住宅・訪問看護・訪問介護・居宅介護支援)の建設と千曲市でのあらたなデイサービス事業の立ち上げ、そして地域住民や研修医・新卒看護師にとっていっそう魅力ある病院をめざし、第9期増改築工事の着工に着手します。
また、1961年に長野医療生協の前身である長野民主診療所が開設されてから50年の節目の年となります。事業活動と組合員活動を長野医療生協50周年と結びつけ、旺盛に取り組みます。
(専務理事・谷口 亮一)
東信医療生活協同組合第27回通常総代会 6月25日
上田創造館において出席総代数152人(本人出席152人、書面出席30人、代理人出席9人)で開催されました。
3つの議案を中澤専務理事が説明し、質疑と意見をあわせ、10人の総代から発言があり、活発な総代会となりました。東日本大震災の取り組みや4月からオープンした「通所介護悠々倶楽部かみしな」の建設運動と現状、組合員増やしで初めて支部目標を達成した教訓など、多彩な発言となりました。
今年度は、第7次5か年計画を役職員と組合員とで、東信医療生協の新たな事業計画を作成するため、議論する年度となります。
(専務理事・中澤 祐一)
医療法人(社団)中信勤労者医療協会第37回定期総会 5月28日
今回の定期総会の特徴は、東日本大震災への支援活動の中で行われたことです。民医連の支援活動、義援金のことと合わせて、社員の方からも、南三陸町の現町長さんが若い頃研修で松本に2年間来て、そのときに仕事を教えた縁で今も交流があり、何とか南三陸町に医師支援を送れないか、という発言がありました。
また、昨年から準備してきた「無料低額診療事業」をいよいよ開始していくことを確認しました。友の会の念願だった1万9000名会員達成や、経営的な前進もあり、今年度の課題を進める決意があふれた総会になりました。
(専務理事・三村 功)
医療法人(社団)南信勤労者医療協会 第38回定期総会
2010年度は経常利益7187万円(予算比138%)を確保しました。諏訪共立病院のリハビリの強化(回復期リハ病棟で365日リハ開始)と病床管理、つるみね共立診療所のデイケア利用者増など、各事業所で予算達成に向けて努力が行われた結果です。
2011年度は2.6%の収益増をはかり、経常利益3467万円の黒字を目指します。2009年度より開始した無料低額診療事業は昨年度170人が利用されましたが、この制度をさらにもうひとまわり広めていく活動が必要です。また今年度は8月に電子カルテを導入し、医療安全を中心に置き、事務労力の効率化をはかっていきます。10月には病院機能評価更新審査Ver.6を受けます。また、つるみね共立診療所のデイケア施設の拡張を行い、個別リハビリも充実させていきます。拡張する施設には浴室も増設し、明るく、広く、利用しやすい施設づくりを目指します。
(専務理事・清水 晃)
上伊那医療生活協同組合第27回通常総代会 6月26日
今年度の重点課題として、①医療生協の「命の大運動」に取り組む。②東日本大震災支援・原発事故被災者支援に取り組む。③伊那市東春近での小規模多機能とグループホーム2ユニットの開設準備を成功させる。病院隣接の高齢者住宅の建設をめざす。④累積赤字の圧縮へ6400万円の税引前利益を確保する。⑤業務基準の整備と基準に沿った業務運営を進める、という方針を確立しました。
また、無料低額診療に対応するため、定款に社会福祉法の規定にもとづく、無料及び低額診療事業を追加する改定を行いました。
(専務理事・野口 正泰)
医療法人(社団)健和会 第37回定期総会 6月12日
2010年度は、南信地域で初めての128列CTの導入をはじめ、病院機能評価の更新(Ver.6)、病児・病後児保育室の開設などが実現できました。また経営面でも増収をはかり、2期連続の当期利益計上ができました。
2011年度の重点課題は、①健和会病院で「無料低額診療」を開始する、②医療機器などへの投資は抑えて、病院の耐震診断及び機械設備や電気設備のリニューアルに取り組む、③医療・介護の一層の連携を強め、引き続き経営改善を行うことなどです。
特に「無料低額診療」は、飯伊地域では初の試みとなります。生活困難な方が経済的理由で必要な医療を受ける機会を制限されることのないように、地域唯一の事業所としてがんばりたいと思います。
(専務理事・林 憲治)
群馬民医連「利根中央病院」への診療支援について
長野県民医連会長 熊谷 嘉隆
支援に至った経過
群馬民医連の利根中央病院(利根保健生活協同組合)は、医師体制を長い間大学派遣に依存してきた歴史がありました。内科・外科・小児科・産婦人科・眼科・皮膚科・脳外科・整形外科・精神科・・・ほぼ総合病院としての診療を維持する医師体制を、長年大学派遣医師により維持していました。
ところが、医師臨床研修制度を発端とした大学の医師不足から、群馬大学医学部が利根中央病院から派遣医師を引き上げたことがきっかけとなりました。困った生協理事会が「民医連を脱退すれば医師の引き上げがなくなる」という、根拠もない感想的意見に影響されて、一方的に民医連脱退声明を出すに至って混乱は一層深まりました。さらに、それまでの法人運営の中で生まれた法人管理部への不信から、民医連を志向する多くの医師も退職する事態に至り、診療の中心となる内科・外科医師体制の維持が困難になりました。これが、支援を必要とした直接的な理由です。
利根中央病院は10万人を超える沼田地域の診療圏の中で、最大の病院で唯一の総合病院です。この病院が倒れることは、沼田地域の医療の崩壊を意味しています。民医連の一病院がさまざまな理由で診療を縮小するというだけの、簡単な問題ではない深刻さがありました。
こういった背景から群馬民医連と全日本民医連は、沼田地域の医療を守るために医師支援を行うことを決めました。長野県民医連の支援第1陣として、6月6~10日まで熊谷が診療支援に行きました。
私たちが学ぶ教訓
大切な点は、医師の診療支援の問題だけではありません。私たち長野県民医連が近隣の県連で起きたことから何を教訓として引き出し、継続して総合的な支援と援助を行うかが大切な点です。
きわめて厳しい医師体制が続く県連内院所の状況がある中で、他県連院所へ医師支援を行う合意形成に至るまでには、県連医師部・医師委員会でも多くの意見が出されました。群馬民医連と利根中央病院の現状から教訓を引き出すとすれば、以下の点が大切と考えられます。
① 大学派遣医師に依存しないで民医連の理念を体現できる独自の医師養成の取り組み
② 法人や病院の展開や意思決定に医師集団の意見を生かすような組織の民主的管理運営の課題
③ 地域の医療・介護の要望に総合的に応えるために、自院の専門的な診療と総合的な診療を組みあわせて行く方法の模索の課題
④ 地域の医療・介護の動向を見ながら法人院所の活動の展開とポジショニングを検討し、それを経営の点からも成り立たせて、一つ一つ具体化する力量を組織的に強める課題
⑤ 県連全体の力で医師養成を図ることや、県連内の各法人事業所が協力して運動を前進させる県連内の交流、県連機能の強化の課題
⑥ 大学派遣の医師集団と共に地域の医療を守る運動をつくるという、創造的な模索・取り組みの課題
以上の点に立って、県連では困難な医師状況の中でも医師支援を行う事を計画していきます。
医療機能評価認定
上伊那生協病院
上伊那生協病院は、2月27日から3日間、医療機能評価機構の訪問審査を受け、6月3日付けで認定されました。受審にあたって、県連各法人のみなさんには大変お世話になりました。ありがとうございました。
医療機能評価認定は、病院開設翌年の2006年度から方針に掲げていました。10年度はじめから、推進委員・職責者が先頭にたち、全職員で取り組んできました。これからも、医療の質の向上をめざしがんばりたいと思います。
(事務長・山﨑 健志)
ピースゼミナールでフィールドワーク
6月24・25日、「満州移民体験者から学ぶ」をテーマに、ピースゼミナール(ピーゼミ)の合宿とフィールドワークが行われました。
身近にある戦争の傷跡から学びました長野中央病院・渡辺 はるか
合宿では、まず健和会病院にて満蒙開拓団の一員として満州に渡り、敗戦後、村民全員が集団自決した中でただ一人生還した久保田諫さんから当時の様子を聞きしました。集団自決の情景は想像するに耐えがたいもので、今も残る額の傷跡がそれを物語っていました。
お話の最後に「敗戦国である日本が戦後60年にもわたって平和でいられる環境をずっと守っていかなければいけない」「中国残留邦人に対し偏見の目で見ることはしないでほしい」と訴えられたのが印象的でした。過酷な経験を経た久保田さんの言葉は大変力強く、生命力にあふれていました。
その後、天龍村へ移動し、戦時中に電力不足を補うために天竜川に建設された平岡ダムを訪れました。建設には約3000人の朝鮮・中国からの強制連行されてきた労働者や連合国軍の捕虜が強制労働を強いられていたそうです。
このように身近な所に戦争遺跡は必ず存在します。その存在を知り歴史を辿るだけでも十分意義のあることだと今回のフィールドワークで体感しました。
2012年介護保険改定をみんなで考える県民集会に参加を!
- 日時
- 10月1日(土)午後1時半~(予定)
- 会場
- 長野県松本文化会館 大ホール
- 講演
- 勝田登志子氏
(認知症の人と家族の会本部副代表)・シンポジウム 他
企画は県連介護ウェーブ推進メンバーと協賛団体で準備中です
東南西北
諏 訪
スワキョーバンドで入職オメデトウ!
6月22日、連絡会職員交流会・新入職員歓迎会が行われました。各事業所の新入職員紹介や永年勤続者表彰などが行われ、交流が深められました。最後は、昨年解散した井上Dr率いるスワキョーバンドが、新たなメンバーで再結成され、迫力ある演奏とボーカルによる新入職員へのパフォーマンスで盛り上がりました。
中 信
出勤直前で幸いにも人的被害なし!
歯科センターに震度5強の傷あと
6月30日、時間にして10秒程の感覚でした。しかし歯科センターに入ってびっくり。壁には2mのひび割れ、受付・診療室はPCなど棚から物が散乱、床は消毒薬で水浸しでした。歯科棟が一番の被害だったようで、院長はじめ管理部が駆けつけ安全確認と応援手配を迅速に指示。10分遅れでしたが無事診療が開始できました。
飯 伊
看護学生さんへ、思いよ届け!
健和会病院では、飯田下伊那出身の卒年を迎えた看護学生さんの自宅訪問を続けています。今回の特徴は先輩からのメッセージを作成し、同封したことです。5つの病棟・外来・透析センター・中央看護課長ら8人が自分の職場で大事にしている「看護」をしたためました。「ぜひ仲間に」というメッセージが学生さんに伝わるとうれしいです。
長 野
老健ふるさとまつりに900人
7月10日、第14回老健ふるさとまつりが開かれました。前日の雷雨の影響もなく快晴の下での開催になりました。当日は900人を超える来場者があり、模擬店、舞台発表、高齢者体験、健康チェックなどそれぞれ賑わいを見せていました。溢れる涙をおさえながら舞台発表に見入っている入所者の姿がとても印象的でした。
東 信
ハイキングでリフレッシュ
東信医療生協健康づくり委員会主催のハイキングが、7月4日に33人の参加で行われました。あいにくの曇り空でしたが、池の平湿原の鏡池では霧が立ちこめ幻想的でした。今年もコマクサやアヤメの群落、レンゲツツジが満開。森林浴で身も心もリフレッシュでき、参加者からは「楽しかった、また来年も」と好評でした。
上伊那
ボランティアさんに感謝
生協診療所いいじまでは、6月25日に職員とデイサービスのボランティアさんとの交流会を開催しました。日頃の慰労と交流が目的で、茶話会と車いす操作方法の講習が好評でした。ボランティアさんの力で五平餅・おはぎなど季節感のあるおやつやお花見、ドライブも実現しています。今後も一緒にデイサービスを盛り上げていきたいです。
飯 伊
「臨床倫理セミナー」開催
6月25日、健和会病院で「ALS患者の人工呼吸器選択ー本人・家族のための意思決定プロセスノート」を試作された、清水哲郎先生(東大大学院上廣死生学講座教授)のセミナーが開かれました。資料が足りないほどの参加者で、倫理の基礎から意思決定のプロセスを系統立てて聴くことができました。次回は臨床倫理シートを使った検討会をと思います。
長 野
緊張感ある消防訓練
7月8日、長野中央病院で昼間の出火を想定し、消防訓練を行いました。震災後はじめて、松本での震度5強の直後ということもあり緊張感ある訓練となりました。病院長を先頭に約70人が素早く救助を行い、消防隊の講評も概ね良好でした。火災は起こさないことが重要ですが、万が一の備えが大切だと感じました。
251号「'手遅れ死'の背景に高い保険料」の本文で「年収」は「所得」の誤りでした。おわびして訂正します。